妻の振り込め詐欺撃退法

東京大田区の女性方に息子を装い「事業に失敗してお金がいる」と電話、
バイク便を装って現金300万円を受け取ろうとした疑いで
27歳の男が逮捕された。
女性が電話の相手に「ケンジかい？」
と実際の息子とは違う名前で話しかけたところ
相手が「そうそう、俺ケンジ」と逆に騙されているとも知らず調子よく会話。
みごと女性の騙されたふりで、犯人がお縄になった。

女性は今までに何度も息子を装った振り込め詐欺と思しき電話を受けており
「いつか捕まえたいと思った」と力強いコメント。
機転の利いた素晴らしい対応に私は感激した。

かつて振り込め詐欺が世の中出始めの頃、
会社でも奥さんがそういう電話を受けた、
という社員がいて注意文書が回ったことがある。
そのとき妻に「そういう電話かかってきたらどうする？」
と聞いたことがあるが、そのとき彼女は
電話口でしくしく泣いてるなんて情けないから「自分で始末つけな」
と言って電話切るだろうな～と言っていた。
あまりに私の想像通りの回答で笑えなかった。
間違っても彼女は「どうしたの？」なんて言うはずがない。
同情なんてするはずがない。
仮に本当に事業に失敗したとしても「才能ない癖にそんなことやるからだ」
と一蹴されて終わること間違いない。
妻の母親が子供の頃に「ヘレンケラー」や「ナイチンゲール」の
伝記を彼女に買い与えたと聞いたことがあるが、その気持ちが今わかる。


でも、息子が泣いて電話かけてくるとしたらどうか。
私に対してよりも寛容な態度になるかと思って
「どうする？子供たちのうち、どちらかを偽って電話かかってきたら」と聞くと
「え？たとえば太郎かい？って話しかけたりすればいいのかな」
「そうそう、そしたら犯人が太郎だよって言ってきて誘導するのさ」
「面倒くさい。うちには太郎も次郎もいねえよ！って電話切る」
…間違っても「騙されたフリ」というような回りくどいことはしないらしい。
それでもさらに聞いてみる。
「じゃあさ、事業に失敗したとか、痴漢で捕まったとか、交通事故起こしたとか
株で失敗して会社の金横領したとかとにかくそんなこと言ったら？」
「腎臓ひとつ売って金用意しろ、って言うかな～」
数年前よりパワーアップしていた。

最近ではバイク便やエクスパックを使ったり
携帯の番号が変わったと数日前から仕込むなど
手口が複雑になっているという。
しかし、妻のようにきわめて沸点の低い人間には
もっと別のアプローチで臨んだ方がよいかもしれない。

ニュースを見ながら妻はこう言った。
「うちに電話かけてきたら『おとといきやがれ！』って言ってやる」
そちらを見ると、背後に青緑色の炎が立ち上っているようだった。
手をポキポキと鳴らす姿もそこに見えた。
くわばらくわばら…


（妻にナイチンゲールの伝記を読ませたくなった方はワンクリック）